瀬戸内海を一望する高台にあるバラ園は、「癒しの空間の提供」と「植物の収集・保存」という役割の両面を象徴する存在です。園全体で約850品種1,500株のバラを保有し、人気の四季咲きバラやつるバラはもちろんのこと、オールドローズや歴史的に重要な古品種、世界から集めた野生種など、貴重品種の収集には特に力を入れています。下記の「雲取」や「長良」の例のように、先人の遺産を守り、未来に引き継いでいくことも植物公園の重要な役割のひとつです。
「雲取」と「長良」について
日本最初のバラ育種家で、海軍大佐でもあった有沢四十九郎の作。日本のバラの歴史上重要な品種だが、2007年時点では全国でも当園にしか保存されていませんでした。
植物公園のバラ
当園のバラコレクションの特徴として、多数の貴重な品種を収集・展示している点が挙げられます。中でも、「アーリーモダンローズ」「オールドローズ」「世界から集めた野生種」「広島に寄贈されたバラ」の4グループが当園のコレクションを特徴づけるものとなっています。
新品種の登場とともに、過去の園芸品種は忘れられる運命にあります。野生種においても、環境の変化などにより絶滅の危機にさらされている植物があります。それらの中には、歴史上重要な品種や今日では失われつつある遺伝的特徴を残したものが含まれています。
当園では、これらの貴重な園芸品種や野生種の保存を通じて、遺伝資源の保護、園芸文化の継承に取り組んでいます。
プレジデント・マーシャ
現在ではほとんど見ることが出来なくなったアーリーモダンローズの一品種
ロサ・キネンシス・スポンタネア
現在のバラに四季咲き性を伝えたのはコウシンバラだが、その野生型で一季咲き性のもの。最初の発見以来永らく存否が不明になっていたが、プラントハンター荻巣樹徳氏が中国の山奥で約80年ぶりに再発見した「幻のバラ」
リージャン・ロード・クライマー
中国雲南省麗江(リージャン)の道端で発見された原始的なティーローズの一種
アーリーモダンローズ
モダンローズは1867年作出の「ラ・フランス」に始まる四季咲きの系統で、様々な花形・花色のものが育成されています。当園では、「アーリーモダンローズ」と呼ばれる戦前の品種の収集・育成に特に力を入れており、今日では見る機会の少なくなった品種を多数保存しています。
オールドローズ
モダンローズ成立以前の古い系統ですが、根強い人気があります。現在のバラの成立に関わった歴史上重要な品種を多数展示しています。また、ナポレオン妃ジョゼフィーヌの寵愛を受けた宮廷画家ルドゥーテが「バラ図譜」で描いた品種のうち、今日に伝わるものの多くをご覧いただくことが出来ます。
世界から集めた野生種
海外の植物園などから導入した貴重な野生種約100種を展示しています。植物園として、絶滅の恐れのあるバラの生息域外保全や遺伝資源の保護の役割を果たしています。
広島に寄贈されたバラ
国内外から広島市に寄贈されたバラを展示しています。広島の復興と平和の象徴として、平和記念公園に植栽されているほか、当園で大切に栽培・維持管理されています。