熱帯スイレン

スイレンの伝説と文化

 フランスの画家、モネの作品でおなじみのスイレン。
その美しさにより、古くから愛されてきました。

 古代エジプトの人々とスイレン

 ナイル川に咲くスイレンは、古代エジプト王朝の人々にとって神聖なものでした。スイレンの花が、朝に開花し夕方には閉じるという習性や、花の形が放射状になることから、太陽を象徴する花として大切にされました。特に青い花のスイレンは聖なる花として崇められていたようです。国王の戴冠式には、南のスイレンと北のパピルスを結び合わせて広大な領土を表したともいいます。古代エジプト遺跡の壁画や彫刻にも数多く描かれ、神への供物や髪飾りなどとして使用されていとことがうかがえます。また、ラムセス2世(紀元前13世紀)の墓からは、青と白のスイレンの花片が発見されています。

 ナイル川に生えていたスイレンは、青花・昼咲きのカエルレア ( Nymphaea caerulea ) と、白花・夜咲きのロツス ( N. lotus ) であるといわれています。

 ギリシャ神話

 ギリシャ神話では、英雄ヘラクレスに捨てられ、惨めさに耐えきれずナイル川に身を投げた美しいニンフがスイレンに変えられたとあります。スイレンの学名 Nymphaea (ニンファエア)は、この話に出てくる精霊ニンフ(nymph)に由来するという説が有力です。ちなみに、ニンフは森・山・川などに住む美少女の姿をした精霊とされています。

 美しい精霊?それとも恐ろしい妖魔?

 ドイツなど、ヨーロッパにはこんな伝説もあります。
 沼に住む水の妖精たちは人間の目に触れることを嫌い、人間が近づくとスイレンに姿を変え人間がいなくなると元の姿に戻るといいます。また別のお話では、スイレンの葉の下には水魔(水の霊)が棲んでいて、自分の愛するスイレンの花を手折ろうとする人間を沼の中へ引き込んでしまいます。
 森の奥の小さな沼地にひっそりと咲く姿からか、美しい精霊の化身であるという一方で、恐ろしさを感じさせる伝説も多いようです。水の事故に対する警告の意味もあるのでしょう。

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