バラの歴史コーナー

バラ園の東側スロープに、バラの歴史を紹介するコーナーができました。
西洋のオールドローズ
紀元前から知られていたロサ・ガリカを基本に、ヨーロッパから中近東に自生する様々な種が交配されて成立したと考えられている。一部の例外を除き一季咲きでダマスク香のあるものが多い。
アポセカリーローズ(G)
(ロサ・ガリカ・オフィキナリス)


直訳すると「薬屋のバラ」。学名の「オフィキナリス」も薬用であることを意味する。紀元前から栽培されていたガリカ・ローズの中でも最も古い栽培型と考えられている。中世イングランド王朝のランカスター家の紋章でもある。ダマスク香がある。
オータム・ダマスク(D)
(ロサ・ダマスケナ・ビフェラ)


別の名を「カトル・セゾン」ともいい、直訳すると「四季」。とはいっても、わずかに返り咲きする程度で、本来の四季咲きとは程遠い。西洋では、18世紀にチャイナローズが導入されるまで、四季咲きバラは存在しなかった。強いダマスク香がある。
アルバ・マキシマ(A)

1400年代以前から存在していたと考えられる種類で、青白い葉や白い花色が特徴的。アルバローズは、ダマスクローズとロサ・カニナの交雑から生じたとする説がある。独特な清涼感のある香りがある。
ヴィレッジ・メイド(C)
(ロサ・ケンティフォリア・ヴァリエガタ)


ケンティフォリアは直訳すると「100枚の花びら」。それほど花弁数が多い。起源は諸説あるが、ダマスクやアルバなどの複雑な交配の結果、16世紀頃成立したと考えられている。香りはダマスク香。本種はケンティフォリアの花がピンクと白の絞り模様になったもの。
コモン・モス(M)
(ロサ・ケンティフォリア・ムスコーサ)


1600年代末にケンティフォリアの枝変わりから生じたとされている、最初のモスローズ。ガクに苔状の突起があり、その美しさから急速にヨーロッパに広まった。一季咲き。
東洋のオールドローズ
18世紀末から19世紀にかけて、中国のバラがいくつか西洋に持ち込まれたが、それらは四季咲き性、高芯剣弁、真紅の花弁、ティーの香りなど、西洋のバラにはない特質をもっていた。
スレイターズ・クリムソン・チャイナ(Ch)
(ロサ・キネンシス・センパーフローレンス)


中国原産のロサ・キネンシスの園芸品種。1789年に東インド会社からイングランドの庭師スレイターの元に持ち込まれた。その四季咲き性と真紅の花色は、中世のヨーロッパのバラにはないもので、その後のバラの改良に大きく貢献した。
オールド・ブラッシュ(Ch)

1793年にイギリスのパーソンズが入手して広めたことから、「パーソンズ・ピンク・チャイナ」ともいわれている。完全な四季咲き性があり、後の四季咲き品種の作出に重要な役割を果たした。
最初のノワゼットローズ「シャンプニーズ・ピンク・クラスター」は、本種と中東〜北アフリカ原産のロサ・モスカータの交配によって誕生したほか、ブルボンローズの成立にも関わっているとされている。
ヒュームズ・ブラッシュ・ティー・
センティッド・チャイナ(T)
(ロサ・オドラータ)


1809年にイングランドのヒュームズ卿が紹介。中国原産のロサ・キネンシス由来の四季咲き性とロサ・ギガンテア由来のティーの香りをもつ。多くの子孫が生み出され、やがてモダンローズへと発展していく。
西洋と東洋の混血オールドローズ
18世紀末から19世紀にかけて、西洋と東洋のバラの間で様々な交配が試みられた。ヨーロッパの気候に合い、なおかつ不完全ながら返り咲きしやすい系統がいくつか出現した。
クイーン・オブ・ブルボンズ(B)
(ブルボン・クイーン)


1834年。ブルボンローズは、当時フランス領だったブルボン島(現在のレユニオン島)で見つかった西洋と東洋の混血バラに由来する。この系統には返り咲きする品種が多いが、本種はつる性で一季咲き。
ダッチェス・オブ・ポートランド(P)

1770年以前。最初のポートランドローズ。ポートランド公爵夫人と名づけられたこのバラは、交配種としては初めて返り咲き性を獲得した品種。交配親はよく分かっていない。
ポール・ネイロン(HP)
(陽台の夢


1869年。ハイブリッド・パーペチュアルはオールドローズの中では新しい系統で、本種は10cm以上の大輪花で返り咲き性があり、フルーツ香がある。樹形もハイブリッド・ティーに近い。
モダンローズ
1867年、「ラ・フランス」登場。完全四季咲きで木立性の現代バラの礎となった。また20世紀初頭には、従来の交配バラにはなかった鮮黄色の花色が実現した。また、戦後は不可能といわれた青バラの作出が試みられることになる。
ラ・フランス(HT)

1867年。フランスのギヨー作出。耐寒性・強健性のハイブリッド・パーペチュアルに、四季咲き・高芯剣弁・芳香性のティーを交配して生み出されたと考えられているこの品種は、大変画期的であった。
後に、イギリスの育種家が、ハイブリッド・パーペチュアル系とティー系の品種を交配すると同様な性質の雑種が得られることを実証し、それらをハイブリッド・ティー系と呼ぶことを提唱した。「ラ・フランス」はその第一号とされた。
ソレイユ・ドール(HFt)
(カテゴリーとしてはオールドローズに分類される)

1900年。ペルネ・デュシェ作出。ペルシャン・イエローの血を引くこの品種は明るいオレンジ色だが、後にハイブリッド・ティーと交配されて鮮黄色の現代バラ品種が登場する。
グレー・パール(HT)

1945年。青バラの交配親として有名。より青い色を目指して育種家の挑戦が続く。
バラの歴史コーナーにあるバラの主な系統

ガリカ(G)
   ヨーロッパに古くからあった系統で、薬用・香料用。コンパクトな樹勢。

ダマスク(D)
   中東からヨーロッパにもたらされたバラ。ブルガリアで香料用に生産されている。

アルバ(A)
   ヨーロッパの寒冷地に適応した系統。白〜淡ピンク系の花色が多く。灰白色の葉。

ケンティフォーリア(C)
   ヨーロッパで16〜18世紀にかけて生みだされた交配バラ。キャベツの葉のように花弁が多く、丸弁のカップ
   咲き。

モス(M)
   18世紀中ごろにケンティフォリア(C)から派生した系統で、がくや花首に繊毛があり、コケが密生している
   ように見える。

チャイナ(Ch)
   中国原産のロサ・キネンシス(庚申バラ)とロサ・ギガンテアに起源を持つバラ。四季咲き性・剣弁。

ティー(T)
   中国原産のロサ・ギガンテアに由来するティーの香りを持つ系統。

ブルボン(B)
   1800年代初頭にインド洋ブルボン島(レユニオン島)にあった西洋・東洋系混血バラに由来する系統。
   返り咲きしやすい。

ポートランド(P)
   1700年代終わりにはフランスで知られていた起源があいまいな系統。雑種バラとして初めての返り咲き
   品種が含まれる。コンパクトな樹勢と豊かなダマスク香が特徴。

ノワゼット(N)
   アメリカで育成された西洋・東洋系混血バラ。返り咲きしやすい。半つる、つる性の品種が多い。

ハイブリッド・パーペチュアル(HP)
   ハイブリッド・チャイナ(チャイナにガリカ・ダマスクなどが交配された系統)を基本に、様々な西洋・東洋系
   混血バラが複雑に交配されたと考えられている。大輪・返り咲きで、19世紀後半、ハイブリッド・ティー(HT)
   が出現する前の代表的系統。

ハイブリッド・ティー(HT)
   ハイブリッド・パーペチュアル(HP)にティー(T)が交配されて成立した系統。完全四季咲き性で大輪、
   木立性の系統。モダンローズの代表的な系統。

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